今年はGIRARD-PERREGAUX(GP)の象徴的なコレクション、「サボイエ(Laureato)」が誕生してから満50周年の節目です。
これを記念してGPが発表したのが、新世代のサボイエとその基盤となるCal. GP4800です。この新モデルは先代を凌駕する完成度を誇りますが、多くの時計ファンが待ち望んでいたのは、やはりこのブランドの原点である「三金橋(トリプルブリッジ)」の復活でした。
待つこと数か月。その期待に応えるかたちで登場したのが、「サボイエ トリプルゴールドブリッジ トゥールビヨン(Laureato Triple Gold Bridge Tourbillon)」です。
歴史が証明する、唯一無二の美学
1860年。GPの創設者であり天才時計師でもあったコンスタン・ジラール(Constant Girard)は、3本のニッケル銀製ブリッジを用いたトゥールビヨン付き精密時計ポケットウォッチを完成させました。
1867年、この時計はナ沙泰爾天文台のコンクールで優勝。同年のパリ万博ではグランプリを獲得し、その名声を不動のものとしました。
時が流れて、あの特徴的な矢じり型(アロー)のブリッジは、素材をニッケル銀から18Kゴールドへと昇華。世界で唯一、GPを象徴する「三金橋トゥールビヨン」として、今なお進化を続けています。
世界中のトゥールビヨンムーブメントを眺め渡しても、これほど高いブランドアイデンティティと造形美を兼ね備えたムーブメントは、他に類を見ません。
⌚ サボイエの新境地:しなやかさと繊細さ
今回の新作は、先に発表されたサボイエのエレガントなプロポーションを踏襲しつつ、さらに洗練されたデザインです。
ケース: 不錆鋼(ステンレススチール)製のケース径は41mm。
ケース本体には繊細なサテン仕上げが施され、ケースからブレスレットにかけて流れる太めの斜面には、鏡面仕上げが施されています。これにより、光の反射が美しく変化し、装着した際の存在感を増幅させます。
ベゼル: 象徴的な八角形ベゼルには18Kホワイトゴールドが用いられ、サテン仕上げと鏡面仕上げを交互に配することで、繊細な陰影が生まれます。
薄さ: トゥールビヨン機構を内蔵しながらも、驚異的な薄さ10.85mmを実現。多くのシンプルカレンダーのスポーツウォッチよりも薄く、GPの高い技術力がうかがえます。
🔩 進化した一体型ブレスレット
サボイエの魂ともいえる一体型ブレスレットも、大幅にアップデートされています。
デザイン: 一見すると従来型と変わりませんが、各リンクはより細く、中央リンクのつながりはより自然で滑らかです。
機能: 表バックルにはGPの象徴であるブリッジが刻印され、さらに革新的なマイクロアジャストメントシステムを採用。調整幅は4mmに及ぶため、手首へのフィット感が格段に向上しています。
⚡ GP9620:磨きぬかれた単色の世界
この時計の最大の見どころは、文字盤を省略し、ムーブメントそのものを前面に押し出した構造です。
今回注目すべきはそのカラースキームです。従来の三金橋がゴールドとシルバーのコントラストを強調していたのに対し、本作はあえてシングルカラー(モノトーン)を採用。
ブリッジ、ギア、ネジすべてが統一されたシルバー色。
唯一の色味は、各軸受に配されたパープルの宝石(ルビー)だけ。
このコントラストのない空間を魅力的に見せるには、極限まで研ぎ澄まされた仕上げ技術が必要です。
膨大な手仕事の賜物
ムーブメントはCal. GP9620(自動巻きトゥールビヨン)。ベースはCal. GP9400ですが、よりコンパクトな構造と高次元の仕上げを施すことで生まれ変わりました。
動力: 60時間(9400は60時間なので、ほぼ同等)。
仕上げ: ジャッキー・ディストリビューターが誇る手仕事の数々。
全418箇所に手作業によるコーナーカット(倒角)が施されています。
そのうち362箇所は、内角(内倒角)の処理という、極めて高度な技術が投入されています。
💎 ゴールデンオッポチュニティ
三本のアローブリッジは、それぞれ重要な役割を担っています。
1番目のブリッジ: バレル(ぜんまい)と自動巻き機構を支える。
2番目のブリッジ: 時間表示のギアトレインを固定する。
3番目のブリッジ: 1分間で1回転するトゥールビヨンを収める。
特に注目すべきは、メインバレルとプラチナ製マイクロローターが同軸上に配置され、邪魔な影を一切残さず、ムーブメントの美しさを妨げていない点です。
価格と限定数
この芸術的な時計は、その価値に見合った価格と希少性を誇ります。
表格
モデル 参考価格 (中国市場) 備考
ノンビス (標準型) 1,385,000 円 世界限定 50本
ダイヤベゼル (鑲鑽) 1,872,000 円 より豪華な仕様
まとめ
GPサボイエ トリプルゴールドブリッジ トゥールビヨンは、単なる「サボイエにトゥールビヨンを載せた」だけの時計ではありません。
50年の歴史を誇るサボイエのエレガンスと、150年以上に渡る三金橋のDNAを融合させた、GPの真骨頂を味わえる一台です。
限定50本という希少性と、圧倒的なまでの仕上げ美を併せ持つこの時計は、コレクターにとってまさに「最正しい選択(The Right Way)」となることでしょう。
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